DXの本丸は、DXレポート2.2でも付加価値向上です!いかにして、文書情報から価値を生み出すか。その1
はじめに
文書情報マネジメントの切口としては、大きくは、守りと攻めがあると考えています。
・「守り」という切口では、①記録を作成・保有する、②記録を漏らさない、③記録をなくさない、④データを探せるといった観点があります。
・「攻め」という切口では、①効率アップ、②価値創造といった観点があります。
このことは、文書情報マネージャーの認定セミナーで継続的にお伝えし、特に「価値創造」への取組みの重要性については、ワークショップで受講者の皆さんでディスカッションして頂いております。
そして令和4年7月、経済産業省が発表したDXレポート2.2においても、DXの目指す方向性として「既存ビジ ネスの効率化・省力化」でけではなく、本来は「新規デジタルビジネスの創出」や既存ビジネスであっても「デジタル技術の導入による既存ビジネスの付加価値向上である」としています。
■これまでは、紙ベースの文書を利用してきた。
紀元前3000年頃には、文字が発明され、2世紀頃から文字を書くのに適した紙の製法が発達してきました。
そして、1990年代のWindowsPCの登場から電子(デジタル)の時代が、幕を開けました。
電子の時代の前は、主に、紙という物理的な媒体の上に、文字という可視できるもので情報を残していました。このような時代においては、紙文書に残した情報が、新たな価値や付加価値を生み出す根源となっていました。このような時代には、文書管理の重要性の認知が高かったと思われますが、電子(デジタル)の時代になり、ディスプレイに表示したり、プリンターで印刷しないと文字が見えない状態になってからは、文書そのものの扱いや管理の仕方が軽んじられてきたように思います。
デジタルの時代になっても価値創造、ビジネス上の付加価値向上の根源は、紙であれ、デジタルであれ、文書にあると考えております。そうは言っても漫然と、業務の結果を残しているだけでは、価値の創造、ビジネス上の付加価値の向上には結びつきません。せいぜい、デジタル化による業務効率向上までに留まるのではないでしょうか。 では、文書情報からどのように価値を見出すのか、その筋道とはいかに。
■単に文書を溜め込むだけでは不十分
デジタルの時代、特に最近では、ビットコストの低下により、文書を多量に溜め込むことが可能となってきています。一方、検索エンジンの性能も向上し、指定したキーワードに対して、多すぎるほどの文書がヒットしてきます。確かに、ビッグデータ分析的な方法が有用なこともあるでしょう。しかし、そもそも必要な情報が抜け落ちている情報をいくら分析しても、価値創造や、ビジネス上の付加価値向上につなげるのか難しいという認識も必要と考えます。
■結果だけ残していては、価値創造や付加価値向上につながりにくい。文書の質をいかに高めるか。
もし、社内で今残している文書が「結果」だけだったとしたら、一段高いレベルで、経緯や判断根拠、分析したことなども残していくことをお勧めしたいと思います。そうすることで、文書の質が高まります。
以下にいくつかの事例をあげますので、参考にしていただければと思います。
(1)業務手順書
大抵は、最終的な手順書のみが残されています。後の世代になって、組織変更や、新規システムの導入で、手順の見直しになっても手順書から文言以上のものは汲み取れません。そんな時、知りたいのは何故その手順にしているのか、重要なポイントは何かということになります。手順書を作成した際には、このようなポイントだけでも残しておきましょう。
手順書作成から5年も経てば、人の異動や昇格で、辿ることが極めて困難になります。この確認をなおざりにして、手順の改革を行っても、結局やり直しになることもあります。逆に、この確認を行うことで、ITの進歩により、懸念だったことが簡単に解決できることに気づけたりもします。
(2)議事録
決定事項や、会議での採決結果のみを記載したものを見かけることがあります。決定の根拠、反対意見、賛成意見などを含めた経緯も残しておかないと、とても記録と呼べません。そして、この経緯情報こそが価値創造や付加価値向上につながる可能性があるのです。外部環境が変わり、その時は、採用されなくても今であれば、筋のいい考え方である場合もあります。
(3)営業報告書
営業担当者には、市場のお客様の声を聞けるチャンスがあります。顧客様の現状の困りごと、将来的な困りごとの見通し、製品改善要望や、製品への不満、さらには、営業者自身が感じる自社製品の強み、弱みを営業報告書に記載していくことで、新たな価値に気づくことができるかもしれません。
(4)報告書の形式にする
入手した資料をただ登録するだけ、検討した事項をただメモとして残すだけ。このような情報の残し方は、おそらくは本人にしか利用できない。あるいは、本人ですら時間が経てば、意味づけがわからないものになってしまいます。これを避けるために、お勧めしたいのは、上司または、チームのための報告書の形式とすることです。そうは言っても時間を掛けすぎないように、A4一枚程度にまとめるとよいと思います。これだけで、他者も利用できる情報になります。
■わかってはいるけど時間がとれない
このレベルのことは、現場の人もわかっているけど、取組む時間がないというお悩みもっておられるのではあないかと思います。
その2に続きます。
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