羽田空港事故 管制との交信記録は保全されているのか?
2024年1月2日午後6時前。羽田空港に着陸した日本航空516便が、その直後に海上保安庁の航空機と衝突し炎上しました。日本航空機の乗客、乗員は全員避難できたものの、海上保安庁の機体については、機長は救出できたものの他の5人の方は亡くなられたました。さらに、この海上保安庁の航空機は前日に発生した令和6年能登半島地震への支援物資を繰り返し輸送していたとのことで、なんとも痛ましくやるせない事故となりました。
この事故の直後である1月3日から、記録管理の立場からすると気になる報道が相次ぎました。それは、公開された管制塔と事故機(日本航空、海上保安庁)との交信記録です。
最初は、管制塔に記録されたとする交信記録が公開されました。元は英語でしたが和訳されていました。そして盛んに「海保機に滑走路への進入許可は出していない」のコメントが付け加えられていた。
この時に気になったのは管制塔との交信記録は、改ざんや部分隠滅などを受けない状態で保全されているのかということでした。「海保機に滑走路への進入許可は出していない」ことは事実かも知れないが、これは管制する側からすると“そうあってもらいたい”という理想形です。都合のいいところだけをピックアップしてはいないか。
例えば、e-ディスカバリー制度では訴訟リスクが判明した時点で、訴訟ホールドということで関連データを改ざん、削除できない状況に保持します。同様なことが交信記録でも行われていることを期待します。そうでないと記録提示者の都合のいい記録のみを残したのではないかという疑惑がずっと残り続けることになります。
これは、事故機のフライトレコーダ、ボイスレコーダーについても同じで、このような事故の記録は発生後または発見後、速やかに当事者さらには第三者にも改ざん隠滅ができないような形態で保持する必要があります。
電子帳簿保存法 電子取引データの義務が進んだ今日、その実現手段はPKIタイムスタンプ、PKI電子署名、改ざん防止型記録システム等、既に揃っています。これらが既に適用されていることを祈ります。
また、交信記録の内容については、後に「ナンバーワン」という言葉が誤解を与えたかもしれないという報道も出てきています。さらに自衛隊管制官OBのSNSでは、そもそも今回の誘導の仕方が未熟という指摘もあります。やはり、臭い物に蓋をして都合のいい証拠だけを提示するということにならないよう、この際、記録保全についても見直して頂ければ幸いです。
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