紙での処理は、デジタルより信頼性が高い?

 洲本市役所で、非公式の公印風の印を使った返礼品発注申込みが発覚

 ふるさと納税の返礼品に関する不正について、第三者委員会を設置して調査を行っている洲本市にて、情報公開で不可解な発注申込書が発見されました。

 この発注申込書では、ふるさと納税の返礼品としてのおせち料理を1000セット(4800万円)を申し込んでおり、申込み者は前市長の名で市役所では公式に認めていない公印の形式をした「洲本市魅力創成課印」が押印されていました。

 さらに、決裁文書も金額からすると議会決議が必要なのに、議会にかけられていませんでした。いずれも紙文書に押印という形式です。

 さて、ここで気になるのは、どうしてこうもやすやすと怪しげな手続きで、発注・支払いが出来てしまったのかということです。もしや、判子、角印が押印されていることで、無条件に信じ込んでしまったということはないでしょうか。

 デジタルが発達してきた今でも「電子ファイルは、変更されてもわからない。」、「電子(デジタル)より紙が安全・安心だ」という方はいらっしゃいます。

 しかしながら、紙には紙のメリット、リスク、対応策があり、電子(デジタル)には、電子(デジタル)のメリット、リスク、対応策があります。

 今回の事例からは、紙処理にもリスクがあることを再認識して頂ければと思います。

 今回の事例では、まず、決裁文書に問題があります。決裁金額基準からすると議会の承認が必要であったとのこと。何故、そこがスルーされてしまったのでしょうか。決裁基準や決裁手続きが定まっていても、紙書類の場合、それを回付していくのは人手であり、基準に合ってなくても判子さえ押してもらえれば、決裁文書としては、完成しているように見えるのです。これは、紙で回付している限りは性善説頼みで根絶は難しいです。

 しかし、決裁金額基準、承認ルートを組み込んだワークフローを利用すればどうでしょう。悪意を持った人でも正しい手続きを踏まざるを得ず、そもそも悪意すら持つこともないのです。これがデジタルの強みです。いわゆる内部統制は、デジタルにした方が圧倒的に、徹底して、効率的に利かせられるのです。

 次に、発注申込書に押印した「洲本市魅力創成課印」ですが、市役所内部の手続きはわかりませんが、市長の公印が必要であったのでしょうか。公印の形式をした課印を似せたものは作成することは容易であり、現在の技術では、市長の角印程度であれば偽造すら簡単にできるということに改めて気づいて頂ければと思います。

 電子(デジタル)の場合は、PKIを使った電子署名、タイムスタンプという技術があり、このような技術を使えば、紙の場合よりも格段にセキュアな取扱いができます。

 また、紙のもう一つの問題点として、原本は一つで担当部門で保管されています。通常、他部門は写し(コピー)を利用することが多く、コピーを使用することで、すり替え・改ざんをしやすくなります。一方、電子(デジタル)の場合は、コピーをしても同一物であり、保管場所は他部署からも参照できる場所に置くことができます。他部署に提示したものだけをすり替えても確認がすぐにとれるというメリットもあります。

 紙、電子(デジタル)のそれぞれのメリット、デメリット、リスクなどを知りながら、自社、自部門の業務をうまくまわしていくのも文書情報マネジメントの重要な役割です。

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