文書情報マネジメントから見たトヨタ型式認証問題

■2024年6月3日 国交省からの発表

 2024年6月3日、国土交通省から、型式指定申請における不正行為の有無等に関する自動車メーカー等の調査報告の結果等について発表があった。その内容は次のようなものでした。

「国土交通省は、ダイハツ工業等の不正事案を踏まえ、型式指定を取得している自動車メーカー等85社に対し、型式指定申請における不正行為の有無等に関する調査・報告を指示していました。  その結果、5月末までに自動車メーカー計5社(トヨタ自動車、マツダ、ヤマハ発動機、本田技研工業、スズキ)から、型式指定申請における不正行為が行われていたとの報告がありました。」

■6月3日 トヨタの会見

 この発表を受け同日、トヨタの豊田章男会長が会見を開き、「正しい認証プロセスを踏まずに量産、販売してしまった」と説明した。そして、再発防止に向けてグループの責任者である豊田章男会長は「トヨタ生産方式(TPS)自主研究会」を立ち上げ、これまでは全体が把握できていなかった認証に関わる業務の「モノと情報の流れ」を見える化することから作業を進めているとしている。

■この問題を文書情報マネジメントの観点から見る

 これまで文書管理と言えば、整理・整頓、検索しやすくという活動だと思われてきましたが、今回の問題への対策としては、無力ではないでしょうか。整理・整頓は、今、目の前にある文書に対する活動ですが、今回の問題は、そもそも必要な記録を残していたのか、もっと言えば、記録の内容が正しくなかった、必要なことを記録として残していなかったというところが根本的な原因としてあるようです。ですので、豊田章男会長は「モノと情報の流れ」を見える化することから進めるとしており、進め方としては正解なのではないでしょうか。

  さらに具体的に言えば、試験仕様通りに試験をしなかったということですね。なんだそんな簡単なことができなかったのか? と思った方いませんか?

 これは日本人にとっては、結構難しいことなんです。何故なら日本人は、誰に命ぜられるまでもなくほぼ全員が、日々業務改善に取り組もうという意欲を持っているからなんです。マニュアル通りを越えてしまおうとします。特に、知識や経験のある人ほど、そういう取組みになりがちです。このテスト方法より、明らかにこちらの方が効率的だ、安全性が高いだとは判断することができてしまうからです。しかし、それは検査担当者の権限を越えているでのです。

 では、それを放置しておけと頭ごなしに命じてしまうと、モチベーションの低下、作業効率の低下を招きます。では、どうすべきか? 提案してもらって、社内で検討、場合によっては、国土交通省にも相談するのです。これで初めて、前向きのループに入れます。

 そんなとこまで、文書情報マネジメントと思われるかも知れませんが、文書情報マネジメントは業務と文書、記録の橋渡しをします。必要な記録を必要なポイントから入手できているのか?

 今、一度、全社で考えてみませんか。

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