公文書管理のデジタル化は待ったなし!小さな自治体が成功するための実践策
1.はじめに
「デジタル化」は大規模な自治体だけの話なのでしょうか。確かに、自治体が公文書を紙文書のまま取り扱っていても違法ではありません。しかし、小規模な市町村が紙文書中心のままであり続けることは問題がないと言えるでしょうか。
2.公文書管理法とは
公文書管理法は、国の機関や独立行政法人に対して、国民の財産として行政文書(公文書)を作成し、それを行政の意思決定の経緯を説明する証跡として保存すること、ならびに効率的に実施することを求めています。一方で、自治体については本法の対象外であり、努力義務が課せられているにとどまります。
3.小規模な自治体が直面する課題
行政文書(公文書)を紙文書のままとしていることで、自治体が直面する主な課題を以下に挙げます。これらを踏まえると、確かにデジタル化は法律的に強制ではありませんが、人的リソースの少ない小規模自治体にとっては放置できない問題であることがわかります。むしろ、小規模自治体ほどデジタル化に取り組む必要があると言えます。
課題1 紙文書の保存・管理作業が手作業であることから
・管理にかかる工数が減りません。
・書類の誤廃棄などのミスが減らない。
・属人的な管理に陥りやすい。
課題2 フロント業務がデジタルになっても、一旦、紙に印刷して処理する必要があることから
・申請に対する処理・決裁に時間が従来のままでサービス品質が上がらない。
・サービス品質が上がらないことで、当該自治体の魅力が減り、人口流出につながる可能性があります。
課題3 紙文書で執務、紙文書で保存することから
・執務室が紙文書で溢れ、執務環境が悪化する。
・書庫で保存する文書量が増え、書庫が満杯となり、書庫内の管理が行き届かなくなる。
・必要な文書を探すのに時間がかかり、過去の事例などの調査が十分でないまま意思決定を行ってしまう。
4.小規模自治体が取るべき公文書管理のデジタル対応策
(1)現状の課題を認識する
変化を避け続けた結果、状況が悪化している現状(いわゆる「ゆでガエル」状態)から脱却する必要があります。長く同じ環境で執務していると、その環境に慣れ、問題意識を持つどころか、変革を避けたがる傾向すら出てきます。外部の研修会に職員を派遣し、評価基準を設定して職場を見直します。あるいは、外部の有識者に評価してもらい現状を公平かつ正確に認識することが必要です。
(2)決裁機能付き公文書管理システムの理解を進める
決裁機能付き公文書管理システムとはどのようなもので、何ができるのか。そのメリットと利用にあたっての一般的な留意点について理解を進める必要があります。
(3)人的リソース・財政上のリソースを考慮し、対策の優先順位を決める
小規模な市町村においては、このフェーズが一番大切です。デジタル化による主なメリットは、住民サービスの迅速化、文書管理工数の削減、保存スペースの縮小などです。内閣府公文書管理課が発行している「行政文書の管理のためガイドライン」や課長通知は国の機関に対するものです。小規模自治体では人的・財政リソースの制約が大きいため、解決方法や優先順位は異なります。そのまま真似をしてもうまく行かないことも多いものです。
5.デジタル化成功のポイント
決裁機能付き公文書管理システムを導入したとしても、あまり欲張らず、まずは直近の事務作業の効率改善や業務改善・改革から始めることが重要です。過去の古い文書の整理については、新システムの運用が安定してから取り組むのが望ましい場合が多いです。
実例については、2025年7月から開催予定のJIIMA主催自治体向け公文書管理セミナーでご紹介します。
6.おわりに
小さな組織ほど、人的・財政的リソースが少ないため、デジタルツールを“無理なく効率的”に導入する必要があります。また、自治体の業務はどこも似てはいるものの、差異も多々あります。無理にシステムに業務を合わせると弊害が生じる場合があります。一方で、紙文書の扱いを固守すると、システムを十分に活用できなくなる可能性があります。この部分については、有識者の支援を受けることで、円滑に進めることができるでしょう。
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