「決まった経緯はどこに?」と聞かれて困らないために――ルールだけでなく、運用できる仕組みを。

▶ はじめに

「この対応、どうやって決まったんですか?」
「当時の検討内容や議論の記録はありますか?」

 そんな質問に、答えに詰まった経験はありませんか?
 議会や監査だけでなく、市民から意思決定の根拠を問われる機会も増えています。

 多くの自治体では、「議事録を残すこと」「記録を作成すること」といったルールや規則は整えられています。
 それでも実際には、「書けなかった」「残っていなかった」「どこにあるか分からない」といった悩みが、現場で繰り返されています。

▶ 規則があっても記録が残りにくい現実

 忙しい日常のなかで、文書化のタイミングを逃してしまったり、 非公式なやりとりで合意形成が進んでしまったり――。 そうした事情から、意思決定の記録が残りにくい状況はどこでも起こりうることだと思います。
 これはルールが悪いわけでも職員の姿勢の問題でもなく、 むしろ「記録が自然に残るような仕組みになっていない」ことが原因である場合も多いのではないでしょうか。

▶ 運用できる仕組みづくりに目を向ける

 このような状況の中で注目したいのが、「事案管理票のような仕組み」です。 重要な案件について、誰が・何を・どう判断したかを簡潔に残せるテンプレートを用意し、 意思決定の経緯を自然に記録できるようにする工夫です。
 すべての案件を一律に扱うのではなく、案件の軽重に応じて記録方法を柔軟に変えること。 重要なものには詳細な経過記録を、軽微なものには簡単なメモでもよい。 そうした柔軟な設計こそが、現実に沿った「運用できる仕組み」になっていくのだと思います。

▶ 上司との共有が記録と連携する

 もうひとつ大切なのが、案件の状況を上司と共有する仕組みです。
 どんな案件が今進行中で、どこまで検討されているのか。

 上司と共有できていれば、判断の場面でアドバイスやフォローが得られることもあります。
 また、後からの確認や説明もスムーズになります。
 逆に、情報が共有されていないと、責任の所在や経緯が曖昧になってしまうこともあり得ます。

▶ まとめ

 公文書を適切に残すためには、ただ規則を作るだけでは足りないというのが、多くの現場での実感ではないでしょうか。

 「現場で使える」「実務に合った」仕組みにしていくこと。
 ルールを“守らせる”のではなく、“守れるように支える”設計にすること
 それが、これからの公文書管理に求められる方向性だと感じています。

 この視点は、文書情報マネジメントの基本的な考え方にも通じています。

▶ 公文書管理も JIIMA と一緒に

 公益社団法人 日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)は、2025421日から、自治体向け公文書管理セミナーの受講申込受付を開始しました。

 実務に即した公文書管理の仕組みづくりを、一緒に考えてみませんか?