「ダイハツ自動車危機! 長期にわたる認証申請における不正」~ 文書情報管理にできることはあるか! その2 ~
2023年12月20日夕方、ダイハツ工業が車両の安全性を確認する衝突試験で不正をしていた問題で、親会社のトヨタと共同記者会見を行いました。会見の中で、1989年実に34年前にも認証試験で不正を行っていたことが語られ、その根深さに驚愕した方も多いと思います。
問題の根本には、社風があるともされるダイハツ自動車ですが、その再生に向けて「文書情報管理にできることが?」を考えてみたいと思います。
■文書管理なんてしても何も変わらない?
「文書管理なんてしても何も変わらない」という声も聞こえてきます。しかし、そういう方が考えている文書管理とは、目の前にある書類をバインダーに綴じる、所謂「ファイリング」を指していませんか。そしてそのバインダーを検索しやすいように整理しておく。
第三者委員会からも記録の散逸が指摘されていましたので、何もしないよりやった方がいいですね。ただ、この活動だけでは社風を変えることまでは結びつかないですね。
■文書情報管理の一丁目一番地
どうしても「文書管理」という言葉は、このようなファイリングと同一視されがちです。当委員会では、電子文書も含めて、文書を管理・活用していくことを「文書情報管理」と呼んでいます。
その考え方の一丁目一番地は、「文書情報管理は、業務遂行のための手段である」です。そして、その中でも重要なのは必要な書類・文書を必要な品質で作成すること、さらに言えば、それを計画することにあります。決して、目の前の書類を整理するだけではないのです。
■経営方針との紐づけが必要
業務の中で、どんな書類・文書を作成し残していくかを考える時に重要になるのが、企業理念や経営方針、社としての行動方針です。これらを反映する形で業務を行い、その証跡などを残していく必要があります。皆さんの会社にも「文書管理規程」はあると思いますが、これは手段についての記述だけですので経営方針と紐づける「文書情報管理基本方針」が必要なのです。
■ダイハツ自動車のグループ理念
ダイハツ自動車グループ理念は、以下のようなものです。
一見、悪くはないのですが、このグループ理念だけでは今回のような不正を防ぐ歯止めにはならないように思えます。
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私たちダイハツグループは、時代をリードする革新的な「クルマづくり」への挑戦を通じて、“世界の人々に愛されるグローバル・ブランド”“自信と誇りを持った企業グループ”を目指します
・世界のお客様の笑顔と感動が私たちの喜びです
・お互いの個性尊重と公平が私たちの絆です
・地球と社会との共生が私たちの責務です
・スピード・ブレークスルー・率先垂範が私たちの基本です
・世界一のスモールカーづくりが私たちの挑戦(チャレンジ)です
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これに対し、トヨタ自動車では「豊田綱領」で次のような考え方を徹底し、
一、上下一致、至誠業務に服し、産業報国の実を挙ぐべし。
一、研究と創造に心を致し、常に時流に先んずべし。
基本理念の最初には、次の戒めも挙げています。
・内外の法およびその精神を遵守し、オープンでフェアな企業活動を通じて、国際社会から信頼される企業市民をめざす
どう思いますか? 組織体制や対策用の部署の新設もいいのですが、至らなかった真因を分析し経営理念に盛込み、これを実践できる経営陣が率先して範を示して行く必要があると思います。そうでないと従業員には信用されず、絵に描いた餅になります。
■文書情報管理にできること
新たな経営方針が策定され、それに紐づいた文書情報管理基本方針を策定すれば、文書情報管理をきちんと進めることは、経営方針を日々実行することになり、良い組織文化の構築に貢献することになると考えます。
具体的なところはダイハツ自動車自身にお任せするとしても、少なくとも以下のようなことは必要と考えます。
(1)事実を包み隠さず、報告し、それを改ざんされないような形で、記録に残し、第三者からのチェックをしやすいようにする。
(2)問題発生から解決までをノウハウとして、技術陣が活用する。
以上
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