文書管理の前にやるべきこと ~ファイルサーバーを使った業務棚卸のススメ~

はじめに

 ファイルサーバーのフォルダ構造が複雑で、部署や担当者ごとに異なっていませんか。
 そのような場合、経営者も現場の実務部門の方も「当社のファイルサーバーは、ルールに従って構成されていない」と考えています。すなわち、「電子文書についての文書管理ができていない」と多くの方が感じるのです。そして多くの方が、ファイルサーバー内のフォルダやファイルにどのようなルールを設定すべきかで悩んでしまいます。

ファイルサーバーの構造が複雑になる真因は何か

 ファイルサーバーのフォルダ構造が整理できていないという際に、「業務一覧がありますか」とか「業務手順書はありますか」と質問すると、ほとんどの場合は「ない」か「古くて現状と全く合っていません」という回答が返ってきます。
 実は、「業務一覧」や「業務手順書」が揃っている場合、それに基づいて階層化することで、ファイルサーバーのフォルダ構造を比較的簡単に決められるのです。


業務の棚卸を優先する

「業務一覧」や「業務手順書」を整備しようとしても、非常に骨の折れる作業になるため、1年、2年と時間が経ってもファイルサーバーのフォルダ構造の見直し作業に着手できないことがよくあります。そんな時に効果的なのは、現状のファイルサーバーのフォルダ構造、登録してある文書(ファイル)から、業務分類表を作り上げることです。

ツミアゲ方式やワリツケ方式という観点ではなく、業務設計の視点で分類する

 文書管理の手法として、ツミアゲ(積み上げ)方式とワリツケ(割り付け)方式があります。
 図1に示すように、ツミアゲ方式では、現存する文書を見て類似の要素を持つものをグルーピングしながら分類を作っていきます。ワリツケ方式では、現存する文書を1つ1つ見ていくのではなく、業務の内容やプロセス等から分類を進めていきます。

図1 業務細分化

 これらの方式は、最終的には、現存する文書をどうにか分類しようという文書中心の考え方になっています。
 この考え方では、TOBE(あるべき姿)に基づくアプローチが不足してしまいます。TOBEとは、理想的な業務フローや文書管理体制のことです。本来はTOBEの考え方に基づき、業務設計の視点を重視する必要があります。

 この課にはどのような業務を割り当てているのか、その下の係には業務処理をどのように割り当てるのかを明確にします。図1の第1階層にあたります。次に、係単位で、ファイルサーバーの登録内容を見て、業務の細分化を考えます。そして、その下に現実の文書を紐づけてみます。具体的にはExcelのようなスプレッドシートで、業務分類表を作っていきます。

業務分類表を作成するメリットを生かす

 フォルダ構造がうまくできているかどうかは、ファイルサーバーのフォルダを辿っているだけではよくわかりません。これは、ファイルサーバーでは対象のフォルダの直下のフォルダまたはファイルしか見えず、全体を俯瞰できないからです。

 これに引き換え、図2のような業務分類表を作成すると、全体が俯瞰できます。

図2 業務分類表

 横軸に、業務の各階層を細分化していきます。通常は第1階層から第3階層くらいまでで、多くても第5階層までとします。業務手順書を記述する場合を考えると、章、節あるいはその下の階層で大抵は収まっていると思いますので、皆さんも納得できるのではないでしょうか。
 そして、各フォルダの最下層に、登録すべき文書の類型と、それらをまとめた文書フォルダ名を具体的に記載します。
 一旦、業務分類表ができあがったら、簡易的な業務手順書の目次を作ることをイメージしながら、次のようなことをチェックします。

  • 部門として認知していない細分業務、文書はないか
  • 余分な細分業務、文書はないか
  • 重複している細分業務、文書はないか
  • 不足している細分業務はないか

 このような分析の中で、属人的な細分業務や文書も洗い出されるメリットもあります。

業務処理イメージ、検索イメージを考慮してフォルダ構造を考える

 フォルダ構造の設計にも、スプレッドシートを利用し、業務分類表に類似のフォルダ構造定義表を作成します。スプレッドシートを利用することで、全体のフォルダ構造が可視化され、管理が容易になります。また、部署間での共有がスムーズになり、チーム全体での協力が可能になります。特に、計画的に年間スケジュールに組み込むことで、属人的な管理からの脱却や、業務の効率化が図れます。
 以下にいくつか設計のためのヒントを挙げます。

  • 取引関係の業務は、取引先別にフォルダを作成し、その下に細分業務を配置すると検索が容易になります
  • ファイルサーバー上の見やすさ、パス長の制限からフォルダ名やファイル名は簡潔にしつつ、曖昧さを防ぐためフォルダ構造定義表に補足情報を記載しましょう。こうしておかないと後からチームに入ったメンバーには理解できなくなります
  • ファイル名に検索時に使用したいキーワードを入れておきます

 ファイルサーバーの検索機能は高くありませんが、このような工夫をしておくことで、よく利用するファイルはエクスプローラの検索機能でも見つけやすくなります。

まとめ

 このように業務分類表を作成するアプローチを先行させることで、ファイルサーバーのフォルダ構造を比較的簡単に定めることができ、これまで属人化していた業務や文書も明確になります。例えば、年間の中の比較的業務が閑散な時期に業務の棚卸しを行っていけば、2年目からはフォルダ構造の見直しに着手できるのではないでしょうか。

 以上のアプローチは、人的リソースが限られている中小企業において、業務効率化や情報管理の面で非常に効果的と考えられます。
 この取り組みは、文書管理そのものよりもやや対象範囲が広くなりますが、経営者を支える文書情報マネージャーに取り組んでいただきたい課題です。

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