宮崎県警、証拠改ざんか? 画像記録のSDカード

 2023年10月28日の熊本日日新聞の報道によれば、
 ”2020年11月に宮崎市で男性=当時(47)=が刺殺された事件の裁判員裁判の事前手続きで、遺留品の証拠画像が記録されたSDカードを捜査当局が一部改ざんして開示したとして、被告側が証拠隠滅容疑で当時の宮崎県警幹部らを刑事告訴することが27日、分かった。近く東京地検に告訴状を提出する。”とのことです。

 さらに、”宮崎県警が捜査に使用しているSDカードは熊本など各地の警察が採用しているが、編集したデータを書き込むことができ「改ざんの余地がある」との指摘がある。”とも報道されています。

 電子帳簿保存法の電子取引やスキャナ保存の電子データを改ざん、削除できない状態で保存しようとしていた方は、自社の使用しようとしているシステムも改ざんされるのではと「ヒヤッ」としたことだと思います。

 この報道によれば、”カードに1度記録した画像ファイルの上書き(編集、加工)や削除はできないが、パソコンにコピーして編集したファイルを新たなライトワンスに書き込むことは可能。”とのです。

 つまり、SDカード自体はライトワンスで1回限りですが、下図のようにカメラで記録したSDカードAのデータを一旦PCに戻せば、いくらでも改ざん、隠滅、捏造による追加を行い、SDカードBを作れるという仕組みだということです。ただ、SDカードA自体がハードウェア的に改ざん、削除を受けていないということには十分留意しておく必要があります。つまり、デバイス自体は改ざん、削除されなくても、その運用の仕方によっては証拠の改ざんを防げないということです。

 類似のことが、PKIを使ったタイムスタンプでも言えます。取引先から請求書をメールで添付したPDFでもらったとします。これにPKIのタイムスタンプを付しておけば、そのタイムスタンプを付した時に、そのファイルが存在して、それ以降は、改ざんを受けていないことを証明できます。しかしながら、下図のように、受領したPDFファイルをPDF編集ツールで、改ざんした後、PKIタイムスタンプを付した場合を考えてみましょう。このような場合では、タイムスタンプを付したPDFファイルのタイムスタンプだけを見ていても改ざんは見破れません。さらに言えば、タイムスタンプを付しただけでは、ファイルの削除が可能であり、証拠の隠滅は防げません。

 このようなことがあるので、電子帳簿保存法 電子取引で、JIIMA認証された製品・サービスを使う時でも、書類(電子ファイル)を受領してから、タイムスタンプを付す過程に手作業が入る場合は、「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程(改ざん・隠滅防止規定)」が必要とされています。また、PKIのタイムスタンプを使用していても、削除ができないことや変更・削除履歴が残ることも求められています。

 改ざん・隠滅防止規定を制定するだけで、改ざん・隠滅がなくなることはありませんが、各企業は、改ざん・隠滅はやってはいけないこととして、各企業が、必要な運用や仕掛けを導入して改ざん・隠滅を防ぐことを求められています。発覚した時は、重加算税などの罰則があります。

 今回の県警の場合のSDカードの管理運用はどうなっていたのでしょうか。一般的に言えば、自部門での運用管理だけでの改ざん・隠滅の防止は難しいと考えます。これからは、生成AIなども発達してきますので、警察・検察の管理の能力に向上と監査体制の充実などを期待したいと思います。

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