第3回 「令和3年度税制改正 電子帳簿保存法」について
電子帳簿保存法、通達及び一問一答の改正等による今後の企業動向について
はじめに
令和3年度電子帳簿保存法改正等を受けて、前回の取扱通達及び一問一答(以下、通達及びFAQという)から、更に踏み込んだ取り扱いと思われる事項と、今後企業が電子化・ペーパーレス化を推進するに当たっての留意事項について、2023年10月から開始される消費税のインボイス税度やDX(デジタルトランスフォーメーション)との関わり等を交えて解説いたします。
帳簿及び電子取引に係る通達・FAQから読み取る緩和措置等
1.いずれの帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置の適用に係る届出書を提出するか
電子帳簿保存法施行規則第5条第1項において過少申告加算税の軽減措置の適用を受けられる優良電子帳簿は、修正申告等の基因となる事項に係る所得税法、法人税法又は消費税法に規定する帳簿とされています。また、帳簿書類FAQ問36において、過少申告加算税の軽減措置の適用を受けようとする際にどの帳簿が法令要件を満たして保存する必要があるかについては、適用を受けようとする税目に係る全ての帳簿を法令要件に従って保存し、かつ、あらかじめ適用を受ける旨等を記載した届出書を提出する必要があるとされています。
そのため、法人においては、法人税法上の帳簿全てと消費税法上の帳簿全てを共に優良電子帳簿として届出書を提出しても構いませんし、いずれか一方について優良電子帳簿として届出書を提出することでも構いません。
なお、直近の事業年度・課税期間に係る届出は、当該年度分に係る法令上保存が求められている帳簿の全ての電子保存が旧法令に基づき所轄の税務署長等に申請・承認済である場合に限り提出が可能となります。例えば、法人税の帳簿について2022年3月期分から届出したい場合、帳簿の全てについて2021年3月末以前に承認済であり、期首である2021年4月から既に電子保存が認められている必要があります。そのため、一部の帳簿でも申請・承認済でない場合やそもそも申請・承認を行っていない場合などは、翌年度(2023年3月期)からの届出が可能となります。
2.電子取引データのデータでの保存に関する宥恕的取扱い
電子取引FAQ問8において、経費精算を例に挙げ、電子取引データの保存するに当たり、企業がかねてより電子取引データを書面出力された紙ベースで業務処理を行っていたものについては、直ちに電子データを集約して管理することが困難であることから、一定の間、従業員のパソコン等所定のフォルダに保存することが認められることが明らかにされました。
そのため、電子取引データのデータでの保存について、令和4年1月から文書管理システム等を導入して法令要件対応することについて、データの保存を確実に行っておくことで若干余裕を持って対応できるのではないかと思われます。
ただし、当該フォルダに保存する場合においても、当該電子データの真実性確保の要件等を満たす必要があることから、例えば、正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理規程に従って保存を行う等、規則第4条第1項の4要件のうちいずれかの規定に従って保存を行う必要があります。
また、税務調査等の際には当該電子データに関する検索機能(ダウンロード提示・提出を含む)を確保し、整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力することができなければなりませんから、円滑にデータ集約が行える状態で保存した上で、最終的に集約してデータを保存する必要があります。
電子取引データのデータでの保存の義務化によるDX推進
今回の電子帳簿保存法の改正で電子取引のデータでの保存が必須となったことにより、データ活用の観点でのデータ授受手法の構築・確立がより促進されるものと思われます。
従来書面で行われてきた取引関係書類の授受については、今後は電子データによる授受が一般的な方法となることが想定されます。しかしながら、単に授受方法を書面での授受から電子メール添付によるPDFファイル等を使用した電子データの授受に変更することでは、テレワーク対応においては利点があるものの、会計処理業務等においてはあまりそのメリットを享受できません。
また、電子取引データの保存方法として文書管理システム等での対応が困難な場合、前回解説した電子取引データ保存に係る検索機能の確保として、通達4-12(検索できることの意義)により示されている電子データのファイル名は規則性を持った名前にしたものを所定のフォルダに保存し検索する方法や、Excel等を使用して検索インデックス(属性情報・索引簿)を作成し、当該Excelの検索機能を利用して所定のフォルダ等に保存している電子取引データを検索する方法も選択肢の1つとしては考えられます。これは単に電子取引データの法令要件に従ったデータ保存のみを目的とした暫定対応としては構いませんが、本来は業務上の受発注情報、販売・購買情報又は会計情報と紐付けて、それぞれの電子取引データを授受する段階において当該関連するシステムへの入力と合わせて電子取引データを保存することで利便性や流用性のメリットが享受でき、かつ効率的な事後検証も可能となります。
さらに、将来的には受領側において、電子データをテキストデータ形式等で取り込める仕組みを構築することで、入力業務の省略・効率化や適正な処理が可能となり、これにより本来の電子化のメリットが享受できます。また、取引当事者双方が他者のクラウド上に改変することなく同一データをデータ連携により授受し共有保存することにより、データの信頼性が確保できるとともに取引情報の一元管理が可能となります。
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