第2回 「令和3年度税制改正 電子帳簿保存法」について

令和3年度 電子帳簿保存法改正
取扱通達及び一問一答解説

はじめに

 令和3年度の電子帳簿保存法改正により、法令要件の緩和として、事前承認制度の廃止、「その他の電子帳簿」の容認、スキャナ入力手順の簡略化が図れる措置などがなされました。 
 一方、電子取引データの書面保存不可、スキャナ保存や電子取引に係る電子データに不正が認められた場合や法令要件に従いデータが保存されていない場合には厳しい取り扱いが示されています。
 今回は、取扱通達及び一問一答(以下、通達及びFAQという)により、具体的な取り扱いが明らかになりましたので、主要なポイントについて解説いたします。

スキャナ保存及び電子取引に係る通達及びFAQにおける要件緩和

1.タイムスタンプ不要とできる代替措置(スキャナ)

 従前スキャナデータについては、改ざん可能性の排除とその時点でデータが存在し保存されている証しとしてタイムスタンプの付与が必須でした。今回の改正では、新たに規則第2条第6項第2号(スキャナ保存に係るシステム要件)により、速やか(おおむね7営業日以内)又は業務サイクル後速やか(最長2ヶ月と
おおむね7営業日以内)に入力したことが確認できる場合については、タイムスタンプの付与が不要になるとされました。
 当該電子データが入力・保存された日時が確認できるようなタイムスタンプの付与と同等の措置を行うことと、規則第2条第6項第2号二(訂正削除不可又は訂正削除履歴を確保したシステム要件)により定められているスキャナデータの訂正削除ができない、もしくは訂正削除履歴管理を行えるシステムにて保存することを持って、従来のタイムスタンプが果たしていた機能を補完し、タイムスタンプの付与が不要となります。
 新たに設けられた通達4-28(国税関係書類に係る記録事項の入力を速やかに行ったこと等を確認することができる場合(タイムスタンプを付す代わりに改ざん不可等のシステムを使用して保存する場合))では、電子データが入力・保存された日時が確認できるような措置の具体的な例示として他者が提供するクラウドサービスが稼働するサーバ(自社システムによる時刻の改ざん可能性を排除したシステム)がNTPサーバ(Network TimeProtocol)と同期かつ、スキャナデータが保存された時刻の記録及びその時刻が変更されていないことを確認ができるような場合などが、その保存日時の証明が客観的に担保されている場合に該当するとされました。

2. 法令要件に従って電子データが保存できなかった場合のやむを得ない事情(スキャナ・電子取引)

 今回の改正では新たに規則第2条第8項(スキャナ保存)及び同条第11項(過去分重要書類のスキャナ保存)並びに規則第4条第3項(電子取引)により、災害その他やむを得ない事情により法令要件に従って電子データの保存ができなかった場合に限り、電子データの保存ができるとされました。
 当該やむを得ない事情については、通達4-37及び7-9(災害その他やむを得ない事情)により、災害に加えて自らの責によらないシステム障害の場合についても該当することが明示されました。
 なお、電子取引FAQ問41により、電子データが消失した場合であっても保存要件は不要となるものの電子データの保存自体が不要となるわけではないことから、可能な範囲で合理的な方法によりデータを復元する必要があります。

3.必要最低限の検索機能実装( スキャナ・電子取引)

 規則第2条第6項第6号(検索機能の確保)に規定するスキャナ保存及び電子取引データ保存に係る検索機能の確保については、通達4-12(検索できることの意義)により、以下の簡易な方法による対応も可能です。

⑴  電子データのファイル名を規則性を持った名前とすることで当該データを保存しているフォルダ等を検索する方法

⑵  Excel等を使用して検索インデックス(属性情報・索引簿)を作成し、当該Excelの検索機能を利用して電子データを検索する方法

続きは下記のpdfでご覧ください。

誌面PDF