進んでますか? J-SOX  改訂内部統制基準への対応 ~経営者による内部統制の無効化リスクの指摘も~

■15年ぶりJ-SOX 内部統制基準 改訂

 SOX法は、米国でのエンロン事件をきっかけに、ポール・サーベンス上院議員とマイケル・G・オクスリート下院議員の名前で提出した企業改革法です。
 日本でもこれを参考に2006年6月7日、金融商品取引法が成立し、財務会計に関する内部統制のルールが規定されました。これが「J-SOX(日本版SOX法)」で、2008年4月1日以後の事業年度から適用されています。
 制度開始からもう15年、形骸化してきているという声もよく耳にしていました。今回の改訂は、2023年4月7日に企業会計審議会から公表された「財務報告に係る内部統制の評価および監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価および監査に関する実施基準の改訂について(意見書)」(新基準)を受けて、2024年4月以降の事業年度から適用となっています。
 皆様の会社でも対応は進んでいますか。

経営者による内部統制の無効化リスクの指摘も

 皆さんご存知のように、組織における一番大きなリスクは、組織トップによる統制の無力化です。一旦、このようなことは起きると組織は壊滅状態となります。

 新基準では、以下のように「経営者による内部統制の無効化リスク」も指摘しています。

・・・・新基準「内部統制の限界」から抜粋・・・・・・・・・・

 内部統制は、次のような固有の限界を有するため、その目的の達成にとって絶対的なものではないが、各基本的要素が有機的に結びつき、一体となって機能することで、その目的を合理的な範囲で達成しようとするものである。

(1) 内部統制は、判断の誤り、不注意、複数の担当者による共謀によって有効に機能しなくなる場合がある。

(2) 内部統制は、当初想定していなかった組織内外の環境の変化や非定型的な取引等には、必ずしも対応しない場合がある。

(3) 内部統制の整備及び運用に際しては、費用と便益との比較衡量が求められる。

(4) 経営者が不当な目的の為に内部統制を無視又は無効ならしめることがある。

■どのように対策するか

 新基準では「組織内に適切な全社的又は業務プロセスレベルに係る内部統制を構築」することで、相当程度の抑止力が働くとしています。

・・・・新基準「内部統制の限界」から抜粋・・・・・・・・・・

 経営者が、組織内に適切な全社的又は業務プロセスレベルに係る内部統制を構築していれば、複数の者が当該事実に関与することから、経営者によるこうした行為の実行は相当程度、困難なものになり、結果として、経営者自らの行動にも相応の抑止的な効果をもたらすことが期待できる。適切な経営理念等に基づく社内の制度の設計・運用、適切な職務の分掌、組織全体を含めた経営者の内部統制の整備及び運用に対する取締役会による監督、監査役等による監査及び内部監査人による取締役会及び監査役等への直接的な報告に係る体制等の整備及び運用も経営者による内部統制の無視又は無効化への対策となると考えられる。

■業務プロセスにおいて内部統制を利かせる

 業務プロセスにおいて内部統制を利かせるためには、①虚偽記載の発生する箇所の識別力と②その対応が必要です。

 特に、識別した虚偽記載発生の箇所に関するリスクに対する対応としては、下記は必須事項となります。

・不正又は誤謬を防止又は適時に発見できるよう適切に実施していること。

・適切な職務の分掌の導入していること。

・業務責任者は、内部統制の実施に必要な知識及び経験を有していること。

■JSOXの評価範囲

 J-SOXでは、各社の負担を考慮して、評価対象とする「事業拠点、業務プロセス」を財務諸表に影響の大きいものだけに限定できる仕組みとなっています。しかしながら、対象となった拠点、業務プロセスだけで、内部統制を働かせるということではなく、全社として、その環境を育成、維持した上で、報告は対象とした範囲のみとして行くことが必要ではないでしょうか。そのようにしないと社内の人財育成、全社としての統制レベルの向上につながらず、言われたことだけやる形骸化した活動となると考えます。

■文書情報マネジメントに全社で取組むことの意義

 J-SOXが導入された2006年当時は、J-SOXへの対応そのものが活動の目的化されることもあったと思いますが、現在ではコーポレーレート・ガバナンス、DXの実現が会社としてのメインテーマになってきています。コーポレーレート・ガバナンス、DXとJ-SOXは、全く別々の活動ではなく、コーポレーレート・ガバナンスはDXの活動の一環で、J-SOXに取組むことが効率的、合理的な進め方となって行きます。
 ここで全社として、文書情報マネジメントに取組むことで、次のようなことができるようになっていきます。
・業務プロセスの可視化に取組む。
・その中で、文書情報の流れを明確する。
・不正又は誤謬を防止又は適時に発見できる。
・ITなどを使って効率化していく。
・重要な判断には、適切な職務分掌を導入し、複数人でに承認行っていく。
 さらに、このような考え方を会社の文化として定着させていくことにも貢献できます。

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